ウッドリペアに関して


こんなアホな事をDIYでやっているのは日本広しといえどもあまりいないでしょう・・・
しかし、やはり挑戦したいと言う方は多くいらっしゃると思いますので、総括としてここに情報をまとめておく事にしました。


ウッドリペアは根気も技術もいる大変な作業です。
専門の職人がいるくらいですから難易度はA+と思って間違いないです。
かならず一度はスペアのいらないウッドで実験してからやらないと、失敗したら手の施しようが無くなります。コツをつかむまでは相当大変です。つかんでも大変です。
私はXJSのウッドを全て仕上げるのに1ヶ月は生活を犠牲にしました・・・よって家族の理解も無いと厳しいでしょう。
旧塗装膜を剥がすやり方、塗るクリア樹脂、磨くコンパウンド、仕上げ磨き、すべてそれ相応のものを買いそろえねばなりません。磨くのは機械が無いと無理です。しかも樹脂やポリッシャーの種類によってコンパウンドのベストな選択が変わったり、塗装膜の状態によってその剥離方法を変えたり、臨機応変に対応しなくてはならないため、これというマニュアルは存在しないと言っても良いと思います。


まず、全部塗り替えたいのではない、ヒビだけを何とか消したいという場合。
これが殆どでしょうね。
しかし残念ながら私はここをすっ飛ばしました(笑)
ここに関しては、福野礼一郎氏著の「極上中古車を作る方法」という本が出ていますので、買って読んで下さい。
この本はDIYレストアをやりたい人にはバイブルです。
何でもネットで情報を漁ると言うのが昨今の悪しき習慣です。本は実に様々な情報を与えてくれます。


とはいえ、その本も最近では入手が段々困難になってきているようですので、簡単に方法を紹介しておきます。
ヒビの入った部分の上から、スジ彫り用のカッターで溝を掘ります。
その上からクリアレジンを細い筆で流し込み、硬化させます(当HPの別のメンテページで紹介している強制乾燥ブースを使って完全硬化させます)。
そのあと、盛り上がった部分を当て木をしたペーパーで磨き、バフ研磨で仕上げます。


上記方法でも目立つようなら、いっそ上からウレタンクリアを拭いてしまうのも一つ手ですが、面積が広いと大変ですし、失敗したときのダメージは計り知れないので、スプレーは使わないのが吉です。


クリア層全てをやり換える時には、いくつか方法があります。


オリジナルのクリアに関しては、私の知る限りは以下のようになっているようです。

・ジャガー(旧モデル、現行は不明)  クリアポリエステルのみ
・ロールス(旧モデル[ベントレー含む]〜現行) クリアポリエステルのみ
・ベントレー(現行) クリアポリエステル(複数層の塗り重ね)+ウレタントップコート
・センチュリー(現行) クリアポリエステル(1層厚塗り)+ウレタントップコート

ポリエステルはFRPに使われている樹脂として有名です。
ウッドのレストア業者はほとんどがオリジナルに忠実なポリエステルを使用しています。


なぜ通常のクリア塗装をしないかというと、やはりその厚みを出すのが難しいと言う点にあるでしょう。
普通の塗装では、かなり塗り重ねないとクリア層の厚みを出す事が出来ないので、手間がかかりすぎます。
アクリル塗装ですと、車内でいろいろなものが触れる状況にあって、塗装皮膜が弱すぎます。シートベルトがカチッと当たったら最後、塗装がすぐに欠けるでしょう。
ウレタンのみだとおそらくコストがかかるのではないかと思います。
メーカーがポリエステルを使うのは、安価である事、粘性が低く気泡が入りにくい事、また硬化時間が短く勝負が早いこと、手軽に厚みを出せること、がその理由ではないかと思います。
ちなみに、上記ベントレーとセンチュリーの塗り重ねの問題ですが、これは考え方の違いによるものです。
ベントレーでは、ローラーで何度も塗り重ねるという昔ながらの方法を取っているのに対し、センチュリーではパネルに静電気を帯びさせ、クリアを垂れないように硬化するまで固定するというハイテクな方法がとられています。
そのため、結果的には同じような厚みの製品が完成します。


一方、私がエポキシ系レジンを使ったのは、

・硬化がゆっくり目で修正しやすい事
・発熱等によるひずみが出にくい事
・有毒ガスが出にくい事
・硬化してからもある程度の弾性を保ち(もちろん触ればカチカチですよ)、ひびが入りにくい事
・スプレーのクリアと違い肉厚に盛る事が出来る

という理由によるものです。
ロールスでも一部限定車にはエポキシ系レジンを使っているものがあるようです。
ただ、エポキシ系の樹脂は粘度が高く、どうしても気泡を取りきれません。場合によっては表面が泡だらけになり、磨いても磨いても下から気泡の穴が出て来るという地獄に陥ります。
これはポリエステルでも起こりうる事です。


従って、ベストな方法は、ポリエステルでもレジンでも何でも良いので、クリア樹脂を盛ったあとにペーパーがけして磨き、最後に2液性ウレタントップコートをスプレーする事です。
こうする事で表面のツヤも手軽に得る事が出来ますし、万一気泡の穴があってもスプレーでカバー出来ます。
600番のペーパーから始めて、最後コンパウンドでバフがけしツヤを得る、と言う方法はよっぽど気が長く暇でないと1台分やりきれません。


実際の工程に関しては、その他のウッドリペア作業を紹介したページをご覧になってみて下さい。
クリアを剥がすのが一番面倒で神経を使います。


ここまで長文を読めた方ならきっと出来ると思います(笑)
途中面倒で飛ばし読みした方は、DIYによるウッドレストアは諦めて下さい(笑)
やれば、プロが1台分10万〜20万取る理由がはっきりと分かるはずです。



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