トリップコンピュータウッドパネルレストア(2012.5)



板金塗装をする事になったため、その乗らない間が良い機会だということで、トリップコンピュータ周りのウッドパネルをレストアする事にしました。
ウッドパネルを外すまでの手順は
こちら




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取り外したウッドパネル。この小さい写真だとあまり傷んでいないように見えますが、実はパキパキに割れています。

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斜めから見るとよく分かります。
そこら中割れて、酷い所はツキ板が浮いています。

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他にもヒビ(下部)。

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端も浮き上がっています。






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ということでツキ板を完全に剥がしてしまいました。
なんとツキ板を金属パネルに直接貼付けているだけでした。
これでは割れるのも当然です。





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使うのはこのウォルナットのツキ板。
しかし、ご覧の通り波打っています。これを平らに貼るには、右のツキ板のように濡らしてなじませないといけません。
濡らした上で貼付けるとなれば、使えるのは水性の木工用ボンドのみ。それでは金属にうまく接着出来ないので、まずは金属とウォルナットの間に1枚薄い普通の木のツキ板を貼ります。
これは表面が割れないように応力を分散する緩衝剤にもなると考えています。

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このような、普通のベニヤに使われているような木目のまっすぐ通ったツキ板を使います。
これは最初から平らなので、乾いたまま貼る事が出来ます。
これを強力ボンドで金属のベースに貼付けます。
その上から、濡らしたウォルナットの裏に木工用ボンドをたっぷりと塗り、貼付ける訳ですが・・・




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折角なので、2枚のツキ板を使い、真ん中で接いでミラーマッチにする事にしました。
(写真が悪くすみません。真ん中から模様が左右対称になっているのがお分かり頂けると思います)
やってみるとなかなかに難しいです。





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金属パネルに普通の木のツキ板を貼り、その上からウォルナットのツキ板を貼った所。
ウォルナットのツキ板は、強く押さえつけながらドライヤーで熱を加えて素早く乾燥させます。

上の写真のような形に切り抜くのは、貼付けてからの方が無難です。
濡らして貼った後に乾燥させるため、若干縮むためです。
それゆえ、真ん中で接ぐのも縮む分を計算しないといけないので結構難しくなります。

veneer
ウッドが実際にどのように貼られているかの模式図です。





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クリアの厚みを出すには、クリアレジンを使うのが一番簡単です。
2液性のポリウレタン系樹脂で、熱を加える事で化学反応が促進され30分程で硬化するため、仕事が早いです。
しかも刷毛塗りが出来、艶もそのままで十分な程出る上、気泡が残りにくいので、大変便利です。
スプレーのウレタン塗装と違い、有毒な気体を吸い込む心配も無く、アクリルと違って溶剤も使われていない。硬化後の固さも申し分なし。
紫外線で若干黄変するそうですが、黄変したくらいが丁度ウッドパネルらしい色合いになるので、問題はありません。


ただし、このクリアレジンを塗る時にも注意点があります。
5の何も塗っていないツキ板の上に一気に厚塗りすると、ツキ板の中に含まれているエアがボコボコ上がって来て気泡だらけになり、台無しになります。
まずは薄ーくツキ板にレジンを塗り、強制乾燥させると、レジンがツキ板にしみ込む過程で中の空気を追い出し、たくさん泡の粒が出来て固まります。
これをカッターで全て落とし、ペーパーがけします。これが下塗り作業となる訳です。
それから本塗りすれば、一気に肉厚にしても問題なく塗れます。
しっかりレジンをしみ込ませる事で、ウッドの強度を上げる事も出来ますので、一石二鳥です。


また、きちんと脱脂しないと、レジンが部分的にはじかれて乗りに偏りが出るので、そこも注意が必要です。





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即席強制乾燥ブースです。
段ボールに小さく切れ込みを入れ、そこにドライヤーを突っ込んでひたすらブローします。
これで箱の中の温度は5-60度まで上がりますので、30分程つけっぱなしで放置します。
その後スイッチを切って冷ましてから出せば、もう水研ぎ出来るくらいきれいに固まっています。

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中はこのような感じ。





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液体の表面張力の問題でどうしても表面が波打つので、最後にきちんと当て木をしてペーパーがけし、コンパウンドで艶を出して表面を整えます。
まれにレジンをはじいた部分が穴のようになる事があります。レジンが残っていなければ、瞬間接着剤を穴にたらし、乾燥してから研ぐと、驚く程分からなくなります。
その場合は乾燥時間をしっかり取って下さい。





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最後にふちに茶色のペイントを施して終了です。
これは純正仕様です。純正でも仕上げは非常に粗いので、より純正らしくするためにあえて適当に塗りました(笑)




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