エンジン不調に関して


X300では、バルブの焼き付きやヘッドガスケットの抜けなどはほとんどありません。
エンジン不調の原因は、大抵の場合、センサー類の不調によるものです。
また、ECUも割と丈夫で、なかなか壊れた話を聞きません。すぐにECUが疑われる傾向が強いように思いますが、ECUを疑うのは最後でも大丈夫でしょう。
エンジン不調のときにはまずOBD-II診断機にかけてエラーが入っていないか見てみる事が大切ですが、入らない事の方が多いので、その場合は一つずつ原因を潰して追いかけていかなくてはならなくなります。

なお、後付けの電装品の配線がまずくてECUに悪影響を与えていることも多いので、買ってきた中古車のエンジンの調子がどうにも戻らない場合は、後付け電装品を一度すべて取り去り、初期化することも一つの手です。


<アイドリングの不調>

1. アイドリングが荒い。リズムは割と一定

 ・O2センサーの劣化
  ほとんどの場合燃調が濃くなりアイドリングに影響が出る。
  酷い場合は排ガスが黒くなり燃費が極端に悪化する。

 ・フュエルプレッシャーレギュレータ不良
  燃圧が下がり、アイドリングが若干乱れる。
  気付きにくい。
  
 ・スロットルボディの汚れ
  ブローバイでスロットル周りがべたべたになり、十分な空気が供給されない。

 ・シフトポジションセンサーの不良
  室内のシフトゲート横にあるセンサー。
  シフトの位置を検知しているが、ここがうまく働かないと燃調にも影響が出る。
  シフトの微妙な位置によって、PやDの赤いLEDが点かない事があれば、まずはここを
  見てみると良い。

 ・水温センサー不良
  劣化したり断線したりして抵抗値が変わると、燃調に影響が出てアイドル不調になる
  事がある。

 ・エキマニのヒビ
  稀にヒビが入ることがあるようだ。


2. 不整脈が出る

 ・イグニションコイルの劣化
  コイルのボディが割れて漏電し、横からスパークが出る事もある。
  大体寿命は10万キロ程度と思った方が良い。

 ・プラグの劣化
  新品でも、まれにプラグが外れで品質に問題があることがある。
  あるいは、中古車を買ってそのまま乗っていると、電極が摩耗しているのに気付かな
  いようなこともある。
  クルマを譲り受けたら、何はともあれプラグくらいは換えること。
  また、イリジウムは相性が悪いので使わない方が良い。

 ・プラグホールガスケットの劣化
  カムカバーの内側、プラグホールのところにあるガスケットが劣化し、プラグホール
  にオイルが流れ込むことでプラグが濡れて失火する。
 
 ※その他、1. で挙げたパーツが悪くなる事で燃料が濃くなりすぎると不整脈に繋がる事
  も多い


3. アイドリングが慢性的に下がる

 ・スロットルボディの汚れ
  ブローバイでスロットル周りがべたべたになり、十分な空気が供給されない。

 ・アイドルコントロールバルブ(ステッパーモーター)の不良
  上記と同じく、ブローバイで汚れてモーターが壊れ、アイドリングに必要な空気を十
  分送れるだけバルブが開かなくなる。

 ・イグニションコイルの劣化
  コイルの劣化でスパークが弱くなっていたり、漏電したりしてアイドリングが弱くな
  る。


4. アイドリングがふっと下がる/上がる

 ・エアフロ不良
  エアフロのホットワイヤーの寿命。暖まると症状が出やすい。

 ・クランクポジションセンサー不良
  初期症状。こちらも暖まると出やすい。酷くなるとエンストし始める。

 ※上記いずれも不調になるとエンジンがかかりにくくなってくる。クランキングが長い、
  火が入りにくいなどの症状を伴う事が多く、悪化してくるとエンストし始め、完全に
  ダメになるとエンジンがかからなくなる。

 ・プラグ/イグニッションコイルの劣化
  ふっと下がると言うよりも、ブルッと振動を伴って下がることが多い。

 ・燃料ポンプ/ポンプリレーの不具合
  死にかけの時に、エンストまで行かずアイドリングがふっと下がることがある。

 ・エア吸い込み
  エアサクションホース/パイプ(スロットルに至るまでのプラスティック/ゴムで出
  来たパイプ)が劣化し、ヒビが入るなどしてエアを吸い込む事が多い。


5. アイドリングが上がりっ放しになる

 ・スロットルポテンショメーター不良
  スロットルポテンショメーターがダメになると、突如アイドリングが1200-1500rpm
  くらいまで跳ね上がる事がある。
  こうなるとセンサーを交換し、ディーラーで再セットアップしなくてはならなくなる。

 ・スロットルスプリングの劣化
  スロットルのばねがゆるくなり、スロットルバタフライが閉じ切らなくなる。
  この場合は、手で強制的にスロットルをぐっと閉めるとアイドリングが下がるので、
  診断は容易。

 ・水温センサー不良
  水温センサーのコネクタを外して変化が無ければ可能性が高い。
  断線するとエンジンが冷えていると勘違いしてアイドリングが上がる。



<エンジンがかからない>

1. クランキングしない

 ・シフトポジションセンサー不良
  Pの赤いLEDが点いていなければ間違いなくここ。

 ・バルクヘッドターミナルの腐食
  バルクヘッド側にあるプラス電極のターミナルが腐食し、スターターまで電気が通わ
  なくなる事がある。

 ・オルタネータ不良/バッテリー死亡
  バッテリーが充電できずバッテリーが死亡する。またはただのバッテリーの劣化。

 ・スターターモーター不良/スターターモーターまでの配線不良
  モーター本体のみならず、配線がダメになる事もある。
  モーターが劣化しているのに無理をさせると配線が熱を持って傷む事もあるようだ。


2. クランキングはするが火が入らない

 ・クランクポジションセンサー不良
  最初はエンジンが暖まった時のみ症状が出、そのうち常にかからなくなる、という経緯
  をたどる事が多いようだ。もちろん突如死亡する事もある。 

 ・燃料系の不具合(燃料ポンプ本体/リレーなど)
  燃料ポンプが死ぬともちろんエンジンはかからない。
  キーオンにすると5秒ほどポンプが作動し、燃圧を立ち上げる仕様になっている。
  そのため、誰かにキーをオンにしてもらい、そのときトランクを開けておいて、
  「ミー」「ジー」「シャー」いずれかの音が燃料タンクから聞こえてくるか確認する。
  まずはリレーを他のものと取り替えてみて確認。症状が変わらなければポンプ本体の交
  換となる。

 ・水温センサー不良
  水温センサーのコネクタを外してかかればここ。
  ショートして抵抗値が低くなっている可能性有り。

 ・エアフロ不良
  完全に断線するとエンジンがかからなくなる。
  それまでにアイドリングの不調などをたどってここまでになる事が多いと思われる。

 ・リレー不良
  エンジンベイ右前にある
防水リレーの中に、イグニッション関係のリレーがあり、ここ
  がダメになると、全く火が入らなくなる。
  また、エンジンベイ右側のフューズボックス内のリレーが「イグニッションポジティブ
  リレー」、左側フューズボックス内のリレーが「イグニッションコイルリレー」となっ
  ており、これらがダメになってもやはり火が入らなくなるので、いずれも要チェック。
  違う場所のリレーと入れ替えて様子を見てみると良い。
  防水リレーの配置は年式によって違うので、入れ替える際は全てひとつずつずらして
  みるのが確実。




3. 初爆はするが回らない/火が入りそうで入らない

 ・イグニションコイル不良
  イグニションコイルが複数ダメになっていると、かぶったようになり非常にかかりに
  くくなる。1発死んでいてもかかり方が重くなる。

 ・アイドルコントロールバルブ(ステッパーモーター)の不良
  最初にエンジンに火が入るだけの空気を十分に送れなくなってしまう。
  アクセルを踏んですっとかかる時はここの可能性が高い。

 ・プラグホールガスケットの劣化
  カムカバーの内側、プラグホールのところにあるガスケットが劣化し、プラグホール
  にオイルが流れ込むことでプラグが濡れて失火する。

 ・フュエルプレッシャーレギュレータ不良
  ダイアフラムが破れ、燃料がインマニの方へ漏れてしまっている。
  燃圧は低いのに燃料過多になり非常にかかりにくくなってしまう。

 ・インジェクター不良
  XJRに多い。インジェクターに異物が噛み込んで燃料を吹きっぱなしになる。
  ただし症例の絶対数は少ない。


4. クランキング時に異音がする

 ・スターターモーターのリングギア破損
 ・カムチェーンテンショナーの破損

  いずれも稀。


※いずれも当てはまらない場合は電気系(配線、アース等)のトラブルのこともある。



<エンストする/パワーダウンする>

1. アクセルを離し、減速するとエンストする

 ・アイドルコントロールバルブ(ステッパーモーター)の不良
  回転数がすうーっと落ちていき、停止するときや、その直前にエンストする。
  空気の供給がうまくいかないのでアイドリングを維持できないためにエンストする。

 ・スロットルボディの汚れ
  エンジンの低回転時に十分な空気が供給されていない。暖まるとこびりついたブロー
  バイが柔らかくなり、空気が通るようになって症状が直ったりする。

 ※これらの場合、アイドリングは安定しているものの回転数が低い、という状態になるこ
  とが多い。また、一度止まるとエンジンが非常にかかりにくい。

 ・クランクポジションセンサー不良
  こちらも停止するときに止まる事が多い。
  ただし回転数が上下する、暖まったときに止まる、などの特徴があるようだ。
  一度止まった後はかかりにくかったりスムーズにかかったりまちまち。


2. アクセルを踏んでいるのに突如息切れしたようになる

 ・スロットルポテンショメーター不良
  スロットル開度を送る信号が突如途切れ、燃料噴射が止まる。

 ・エアフロ不良
  正常な空気量が分からなくなりアクセル開度は一定なのに勝手に加減速する。

 ・イグニションコイル不良
  複数が突如死ぬと走行中でも急にエンストする。
  エンストした後にかけ直すとかぶったようになっている。
  急にパワーダウンし、アクセルを踏み込んでしばらくするとボボボと言いつつ復活する
  場合はこの可能性がほとんど。燃えない燃料がエグゾーストで燃えバックファイアを起
  こす事もある。

 ・プラグホールガスケットの劣化
  先述の通り、プラグホールにオイルが流れ込むことでプラグが濡れて失火する。
  結果症状としてはイグニションコイルの不良とよく似たものとなる。



<その他不良>

1. オイル漏れ

 ・カムカバー関係
   カムカバーガスケット
   プラグホールガスケット
   カムカバーアイソレータ(カムボルトのシール)
  以上のシールは定期的な交換が必要。カムカバー自体がじめつけすぎでひずんでいる
  事もある。特に締め付けトルクをよく知らない整備工場などでは締め付け過ぎになっ
  ている事が多いので要注意。カムカバーボルトの頭のところのシールが潰れて切れて
  いれば締め過ぎで間違いない。 

 ・オイルフィルターブラケット
  
ブラケットの下にあるオイルバイパスケースのOリングが劣化するとダダ漏れになる。
  驚くほど漏れるが、交換自体は容易。

 ・クランクプーリーシール
  エンジン前方からオイルが漏れている場合、ここがほとんど。

 ・ヘッドガスケット
  あまり酷く漏れる事は多くない。にじみ程度なら無視しても大丈夫。

 ・オイルパン
  ここもにじむ事がある。ここは元々ガスケットが無く、液体ガスケットで対応してい
  るので、エンジンを上げなくても対処できそう(まだ整備経験無し)。


2. 排ガスが臭い
 燃調が濃くなっている証拠。O2センサー、水温センサーあたりの、燃料噴射に直接影響
 しているパーツを疑う。


3. キュルキュル音がする
 可能性の高いものから。
 ・ベルトの劣化
 ・アイドラープーリーのベアリング劣化
 ・ラジエーターファンの劣化
 ・クランクプーリーダンパー(クランクの振動を吸収するために付いているゴムのダン
  パー)の劣化


4.
燃費が伸びない
 O2センサーが不良の場合、高速に乗ろうが町乗りだろうがあまり燃費に差が出なくなっ
 てくるので、これが一つ判断材料になる。


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