タイミングプレートモディファイ(進角チューン)(2015.1)





X300のときに随分と感動し、他のX300オーナーの方々もたくさんご紹介した、点火時期を進める5度進角クランクポジションセンサーブラケット。
AJ6やAJ16では、クランクポジションセンサーの固定にはねじ止めのブラケットが使われており、ブラケットの交換でセンサーの位置をずらし、ECUへの信号のタイミングをずらしてやることで、点火時期を簡単に進めることができます。

※点火時期を早めると何がいいのかはページの最後に書いておきます。


クランクポジションセンサーは、クランクダンパープーリーにとりつけられたタイミングディスクの位置を検知することで、シリンダーが現在どこにあるかを確かめ、点火のきっかけとなる信号をECUに送っています。


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上の写真は、クランクダンパープーリーを裏から見たところで、ボルトで取り付けられている3本の出っ張りのついた部品がタイミングディスクです。
次の写真はそのタイミングディスクだけを取り外したものです。

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V12エンジンでは、クランクポジションセンサーのブラケットがエンジンのタイミングカバーと一体形成で、ブラケット自体をどうこうすることはできません。
クランクポジションセンサーは、XJSXJ81のマレリーイグニッションの場合、クランクプーリーの裏側にあるタイミングディスクの3つの爪がセンサーの上を通る度にECUに信号を送ります。
センサーではなく、このタイミングディスクの方の位置をずらしてやれば、やはり点火タイミングを変えることができます。このディスクはボルト止めで、加工も比較的簡単なので、今回はこちらをいじることにしました。


タイミングディスクは、クランクダンパープーリーの裏側にボルト3本と、ピン1本で止まっているので、その4箇所の穴を広げ、タイミングディスクをずらしてやろうという算段です。
計算は以下の図のように行いました。
(拡大できます)

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エンジンは、前から見て時計回りに回るので、それを考えた上で穴を広げます。
タイミングディスクの内径が72mmなので、これに円周率をかければ円周が出ます。

72mm x 3.14= 226mm

これを360度で割ると、1度あたり0.628mmと出ます。
5度ずらすためには5倍して、内側でいうと3.14mm分タイミングディスクを回せば良いことになります。

実際には、取り付け穴を加工するので、穴を結んだ部分の円周を計算する必要があります。
取り付け穴の中心までの径が72mm +7.5mm=79.5mmなので、円周は249.63mmとなります。5度ずらすためには3.51mmずらせばいいので、穴をエンジンの回転方向と逆に3.5mm広げます。


穴はリューターにダイアモンドビットをつけて削りました。
削ったところには錆止めを忘れずに・・・
行き過ぎないようにしたので、3.5mmギリギリ削れていないと思います。なので4度以上5度未満といったところでしょう。


(タイミングをどこまで進めるべきかということに関してですが・・・5度という数字には理由があります。
海外で、X300のエンジンマネージメントを開発した人物がジャガーマニアの集まるフォーラムにおり、その方の発言によるものです。
90年代に入ってからのジャガーは全ての車種で点火時期・ノッキングに関する基準があり、全開負荷運転を何時間かしても絶対にノッキングを起こさないところにセッティングされているそうですが、そこから絶対安全に進角できるのがAJ16においては5度なのだそうです。逆に言うと、純正仕様では、ノッキングしないギリギリから6-8度程度遅角させたところにセッティングしているのでしょう。よってV12でも考え方は同じでいいと思います。
AJ6で同じく5度進角したXJ40でレースをしたが大丈夫だったということです。XJSを楽しもうのBBSでの報告では、10度までいくと、2-3000rpmまでの実用域では大丈夫でしょうが、全開加速で少しノッキングしたということですので、普段の使い方によってモディファイの具合を変えた方がいいでしょう。
私は割とガンガン踏む方なので、5度程度でやめておくことにします)

あと、6Lエンジンの場合は5.3Lよりも元々エンジンにかかる負荷が大きいので、やはりあまり進角させすぎない方がいいと思います。


ただし、細工するのは簡単でも、そこに至るまでがなかなか大変です。
ベルトを外し、プーリーを外した後、クランクダンパーをプーラーを使って引き抜きます。
クランクダンパーの引き抜き方は
こちら

Pasted Graphic


まあ時間と根気があればお金のかかる作業ではないので、DIYでやれば満足度は高いと思います。
305ならエンジンの前周りが何かとすっきりしているのでXJSよりずっと簡単でしょう。
一番面倒なのはなんのことはないベルトを外す作業です。
XJSではストック状態だと4本もベルトを外さなくてはいけません。
うちのでも電動ファンのおかげでファンベルトが1本なくなっていますが、それでも3本外さねばなりません。
寝転がって下からオルタネータのベルトを外すのは本当に嫌になります。

クランクセンサーのブラケットを改造する方法もありますが、タイミングチェーンケースからブラケットをけずり取らなくてはならず、オリジナルに戻せなくなってしまうので、今回はパスしました。
ただし、その方が後で角度を変えたりするのは楽になります。まあ一度ベストなポジションに持っていけば基本的にずらすことはないので、ダンパー交換時に一緒にやるのが良いでしょう。

さて、前置きが長くなりましたが、効果のほどはと言いますと・・・


明らかに出足が早くなり、吹け上がり軽くなり、回転が滑らかになっています。
全域でトルクが上がっているのに、上までビューンと素晴らしい回転感で吹け上がります。
アイドリング時の排ガスの臭いもマイルドになりました。


はっきり言って全然違います。
直6エンジンよりも効果がはっきり出ています。
踏んだ時の吸気音、排気音が若干大きくなりましたが、私にとっては心地よく長所でしかないのでこれはOKです(が人によっては短所になりうるかも知れません^^;)。


作戦大成功でした。
大変ですがこれはかなりオススメです。

なお、Sr-3や1988年以前のXJSに使われている、ルーカスイグニッションのV12はデスビ内で進角できますので、こんなややこしい方法を取る必要はありません。
デスビキャップを開けて、デスビ本体を止めているネジを少し緩め、わずかに回転方向と逆に回してやればOKです。





自動車のエンジンは、4サイクルで、吸入ー圧縮ー燃焼ー排気を繰り返しています。
圧縮した混合気に、点火プラグがスパークを飛ばして点火し、その爆発のエネルギーでピストンを押し下げるわけですが、混合気が点火され、燃焼が広がるにはごくわずかですが時間がかかります。
厳密に言えば、ピストンが一番上(上死点)に来た時に点火したのでは、燃焼が広がって一番力が出るとき、すでにピストンは下がり始めていて、一番上から一気にピストンを下ろすよりも出力が弱くなってしまう、ということです。
したがって、できればピストンがギリギリ上に来る前に点火して、そのタイムラグをなくすほうが出力はあがりますが、あまり早いと、今度は上がろうとするピストンを逆に押し下げてしまい、出力が弱まるどころかエンジンを壊しかねない事態になります。


通常は、世界中でばらつきがあるガソリンの質のことを考えて、点火時期はかなり遅めに設定してあります。
オクタン価が低いと、ノッキングが起こりやすくなりますので(ノッキングについては
「こちら」(リンクあり)を参照のこと)、エンジン保護の観点から点火時期を遅めに設定しているわけです。


しかし、特に日本ではハイオクのオクタン価が高く、しかも質も良いので、点火時期を5度くらいは早めても全く問題はありません。そうすることで燃焼効率をよくできるので、エンジン出力を高め、燃費すらよくすることが可能になるということです。





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