エクストラエアバルブ点検(2012.1)



うちのクルマは、来た時からアイドリングが高いまま下がらないという症状が出ていました。
1時間以上走り回ったあとでも1100rpmくらいあります。
エアポンプからの配管、負圧制御系のホース、全部目の届く範囲はチェックし、締められるところは増し締めしてみましたが、特に異常/変化は認められませんでした。


AJ6/AJ16でいう所のアイドルコントロールバルブ(ステッパーモーター)と同じ働きをしているのがエクストラエアバルブ(またはオグジリアリ・エア・バルブ、英語をカタカナに直すのは変ですがAuxiliary Air Valveです)という部品です。これが水温に応じて開いたり閉じたりし、アイドリング時の空気量を調整しています。
これの動きが渋くなると、エンジンが温まっても穴が閉まり切らずに、アイドリングが下がらないということになります。


これの動きが渋くなると、エンジンが温まっても穴が閉まり切らずに、アイドリングが下がらないということになります。
これはV12ではものすごく多いトラブルらしいです。
こんな仕組み=消耗品であるにもかかわらず、部品はサーモなどと違ってびっくりする程高いです。
多分ディーラーだと10万オーバー言われるでしょう。


とりあえず外してチェックしてみることにしました。



DVC00382
V12のエクストラエアバルブは、エンジン左バンクのバルクヘッド側にあります。

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この部品です。

左のホースはエアクリに繋がっていて、ここからアイドリング用の空気をバイパスし、上のホースから両バンクのインマニへ送ります。
中には、温度に合わせて動く、ワックス入りのサーモスタットのようなバルブが入っており、それがオリフィス穴の開閉を行って、空気量を機械的に調整しています。このバルブユニットの下にはウォーターレールが来ており、水温が直にバルブユニットに伝わるようになっています。
Sr-3までのXKエンジン(6気筒)も、仕組みは少し違いますが、V12と同じように水温で機械仕掛けの制御です。
AJ6/16ではそれが完全に電子制御になっている訳ですね。





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取り外しです。
まずはエアクリ側のホースのクランプを緩め、外します。
大体のクルマでホースが硬化しているので取り外しはなかなか難しいです。

合わせて上のホースのクランプも緩めておきます。





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上側のホースはスペース的に外すのが難しいので、先に下のボルトを外してしまいます。
トルクスねじです。

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逆側にもあるので外します。
この2つを外せば、本体はフリーになるので、ゴムホースをこじりながら取り外します。





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取り外した後の模様。





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取り外したバルブ本体です。
6角ボルトはアイドル調整スクリューです。
なお、このバルブはパーツナンバーからすると本来DD6用のものですが、何故か本車にはこれが取付けられていました。
過去の整備で何処かの店が取付けたものと思われますが、後述のオリフィス穴の微妙な形状の違いくらいしか違いはないでしょう。

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この下の部分がクーラントに浸かっており、水温をバルブに伝えます。





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エクストラエアバルブの内部。
台形の部分がオリフィス穴で、この中でバルブが上下し、この穴を塞いで空気量を調整します。
台形部分の少し下に穴が開いているのがギリギリ見えると思いますが、これがアイドル調整スクリューの部分に繋がるバイパス穴です。
暖気が終了し、オリフィス穴が閉じ切っても、ここからアイドリングに必要な空気を送り込みます。

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上から見たところ。
穴の開いている円形の物体がバルブのピストンです。





DVC00389
水温検知部分を鍋で煮ればバルブが閉まり切っているかどうか分かるので、チェックは簡単です。
沸騰したお湯にしばらく浸けておけばOKです。
結果、バルブの動きが渋くなっており、オリフィスが閉まり切らなくなっていました。
写真ではオリフィスの上に隙間が出来ているのが分かると思います。





DVC00388
ということで、とりあえずオリフィス穴のところをドアの隙間塞ぎ用の硬質なスポンジで塞ぎ、様子を見ることにしました。
ポイントは、バイパス穴を生かしている事です。スポンジはそれより奥に押し込んでいます。
暖気でエアが要る時には、アイドル調整ねじを回せば空気をバイパス出来るので、そこで調整すれば良いと考えた訳です。
まるで手動チョークですね。


air valve
模式図です。
冷間時はバルブが下がっているので沢山空気が入りますが、適温時にはバルブが閉まり、バイパス経路からしか空気は入らなくなります。
今回はオリフィスを塞いだため、常に適温時と同じ空気量しか行かない事になります。
これだと、冷間時はエンジンがかからないので(燃調が濃すぎる)、朝一でかける時には、アイドル調整スクリューを緩め、空気を沢山送る事で対応できます。





なお、小川さんのホームページに同じような記事があるのを発見しました。

http://jaguarmainte.web.fc2.com/etc/projectx/kei/kei.html


ここではエアバルブの空気の出口側にふたをしていますが(8の図でいえばバルブ上側ですね)、これでは空気量の調整が全く出来ないので、私がやったように、エアバルブの空気の吸い込み側に、しかもバイパス穴をよけて、ふたをするのが確実です。
これならいざとなればアイドリングの回転数の調整が出来ます。


今日一日様子を見た限りだと、アイドリングは、水温により調整ねじを半分〜3/4閉めたくらいの間で調整すれば良さそうです。ある程度暖まってから調整すればきちんと800rpmくらいに収まります。
そして微妙なアイドリングの上下も無くなりました。





2012.3追記

上記処置でしばらく乗っていましたが、面倒になったので結局新品に交換しました。
その日の最初には必ずボンネットを開けてアイドルスクリューを回して調整しなければならなかったのですが、もうその面倒な作業とはおさらばです。


エアバルブは高価な部品で、年式によってパーツナンバーも値段も違います。
何故か後期5.3LのXJS用のエアバルブは異常に高いです。とてもではありませんがおいそれと手の出る値段ではありません。
それに比べ、前期/DD6用のバルブはその半額以下で買う事が出来ます。
今回は流用が出来ないかという事で、新品に交換するにあたって調べた事をここに記しておきます。


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(資料:Kerby PalmsのXJ-S Book)

エクストラエアバルブの内部は、ピストンが上下(温度が上がるとピストンが上がり、下がるとピストンが下がる)していて、筒に開けられた台形の穴をピストンが徐々に塞いでいくことでアイドリングを下げていく(上の写真/図参照)。
このピストンの動きは、その下にあるバルブによって制御されており、バルブはサーモスタットと同様、ワックスの膨張変化によって制御されている。

このエアバルブは年式によっていくつかのパーツナンバーがあるが、ピストンや内部のバルブ自体は同じものが使われており、従ってその上下動の幅も同じであると見て良い。
異なっているのはエアの吸い込み穴の形状と位置である。
これはエミッションに応じて変えられたものであるが、もしオーナーがそれまでに様々なモディファイを施しているとすれば、もはやこの形状による吸入空気量の違いというのは意味をなさなくなってしまう。

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とすれば、そもそもアイドル調整スクリューがついているのだから、違うパーツナンバーのエアバルブでも、穴の形状が適当であれば使用できる可能性がある、ということです。

以下に記しているのは、XJ-S Bookに掲載されているエアバルブ内部のシリンダ形状です。
穴の位置/形状以外は何ら違いがありません。

 
Pasted Graphic
EAC2273相当(Lucas パーツナンバー:73192)

前期用のエアバルブ。
1987年までのアメリカ/日本仕様以外に採用されていたエアバルブ。
1988年以降、Emission B(=イギリス/EU)のみ、このエアバルブが継続して採用され、それ以外の仕向地のエアバルブは全てEBC1198に統一された。
そのEBC1198はその後6Lモデルで再び採用される。


Pasted Graphic 1
EAC4438相当(Lucas パーツナンバー:73225)

前期用、アメリカ/日本仕様のエアバルブ。
穴の位置が上の方にあり、さらに台形の上に2mmほど穴が延長されている。ここはバルブが完全に上がり切っても開いたままになる。
XJ-S Bookによれば、ここはATのシフトコントロールに補正を加えるためではないか、とのことだが、エミッションの違いによる可能性が大きそうだ。
完全に暖気が終わっても、少し多めに空気を吸わせて空燃比を薄くしているのかもしれない。


Pasted Graphic 2
EBC1198相当(Lucas パーツナンバー:73352)

前期用/後期6L用のエアバルブ。
1988年以降の前期、ヨーロッパ仕様以外で採用されていたエアバルブ。
EAC2273と台形部分のディメンションは似ているが、その下に大きく横に広い穴があいている。この広い穴は、室温だとバルブによって塞がれているが、水温が0度に近づくにつれ少しずつ開くことになる。                            
寒冷地でより暖気を早めるための工夫らしい。台形の下辺が広くなっていることから、吸気量自体もEAC2273より増えているものと思われる。


XJS後期の1993年までのモデルはEBC3819が使われているが、残念ながらこのデータはありません。
しかし、上記シリンダ形状から察するに、特に寒冷地でもない平地で使用するならば、EAC2273が使えそうです。
この4種類の中で、EBC3819とEBC1198の価格が異常に高いです。EAC2273なら半分とまでは行かずとも6割程度で買えるのです。EAC4438は最も安いのですが、今、エアクリ内のエアバルブダクトをほぼ完全に塞いだ状態でアイドリングが適正値になっていることを考えると、余分な空気の入る余地のあるEAC4438よりは、EAC2273のほうが間違いなさそうです。安いEAC4438を買って、アイドルスクリューを締め込んで使うという手も使えるかもしれませんが、EAC4438はそもそも穴の位置自体が全体的に上なので、暖気の終わる時間が遅くなる可能性もあります。

以上のような考察を経て、今回結局EBC2273を購入し取り付けました。
すなわち前期/DD6用の流用です。
まだ季節的に水温が上がり切らず、アイドル調整の詰めが出来ていませんが、ひとまず問題はなさそうです。空気が入りすぎているという様子は全くありません。アイドルスクリューで十分調整出来る範囲内にあります。

6Lに乗っている方でも、アイドルスクリューを開け気味にしておけばたくさん空気は入るので、EBC1198の代わりにEBC2273を使う事は可能でしょう。
何万も違う事を考えれば、少々の違いは気になりません^^;



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